
不妊治療をすると双子妊娠の確率が上がる?

双子を出産する際のリスクを知りたい。
不妊治療に関してこのような悩みをお持ちではありませんか?
不妊治療を進めているなかで、突然2人の子どもを授かる可能性があるのをご存じでしょうか。
双子妊娠がわかった瞬間の喜びは計り知れないものですが、驚きも同時に感じることでしょう。
2人の子どもを同時に迎えることは、出産や育児の不安を伴うこともあります。
この記事では、不妊治療により双子妊娠の可能性が上がる理由や双子の妊娠確率、双子を出産する際のリスクについて紹介します。
- 不妊治療により双子妊娠の可能性が上がる理由
- 双子の妊娠確率
- 双子の種類
- 双子を出産する際のリスク
- 双子を出産する際の支援制度
この記事の監修者
不妊治療で双子を授かる確率が高い理由は?
不妊治療では、自然妊娠と比べて双子を授かる理由が高いです。
双子の確率が高い理由として、以下の2つがあります。
- 排卵誘発剤により複数の卵子が排卵するため
- 体外受精と顕微授精で妊娠確率をあげるため
それぞれ詳しく確認してみましょう。
排卵誘発剤により複数の卵子が排卵するため
不妊治療において、双子の妊娠率が高まる主な理由は、排卵誘発剤の使用にあります。
排卵誘発剤は排卵障害がある際に用いられ、複数の卵子を同時に排卵させる作用があります。
これにより、複数の卵子がそれぞれ受精し、着床する可能性が生じるため双子の妊娠の機会が増えるのです。
不妊治療を利用する人数の増加に比例して、双子の出生率も増加します。
体外受精と顕微授精で妊娠確率をあげるため
以前までは体外受精や顕微授精といった高度生殖補助医療では、妊娠の確率を高めるために複数の胚を移植していました。
これにより双子の妊娠確率が上昇する要因になっていました。
しかし、現在では双子の妊娠に伴うリスクを避けるために、1つの胚だけが移植されます。
技術の進歩により、妊娠率に大きな影響はなく、安全性が向上しています。
不妊治療時に双子が判明するタイミングは?
不妊治療後の双子妊娠は、超音波検査によって初めて明らかになることが多いです。
妊娠5週目に入ると、胎嚢(妊娠初期に子宮の中で赤ちゃんを包む袋)が見え始めます。
この胎嚢が2つある場合は、二卵性双生児の妊娠が示されます。
一卵性双生児では、初期には胎嚢が1つしか確認できないため、判断が難しいのが現状です。
しかし、6週目には赤ちゃんの心拍が確認でき、2人分聞こえれば双子であることが判明します。
双子が生まれる確率は?
2022年の人口動態調査によれば、777,115件の分娩の中で双子の出生は8,583件であり、その確率は約1%です。
二卵性双生児の出生率は、人種や遺伝的要因、環境によっても変わりますが、日本では比較的少ないとされています。
不妊治療を受ける際には、特に人工授精で複数の胚を移植することから多胎妊娠の可能性が高いです。
ただし、現在の医療では胚の移植数を1つに制限することが多いため、そのリスクは以前より減少しています。
一卵性双生児の出生確率は、人種や環境とは無関係で、なぜ一卵性双胎が生まれるのかは未だ解明されていません。
不妊治療で双子が望まれる理由
不妊治療を通じて双子を希望する人が多くいます。
なぜなら、一度の出産で2人の子どもを得られるため、一度に家族を増やせる機会が得られるからです。
特に高齢出産を考える方々にとって、複数回の妊娠に挑むよりも、一度の治療で2人の子どもを授かることは大きなメリットとされます。
このように、時間や体力的な負担を考慮して、双子の出産を望むケースがみられるのです。
一卵性双生児と二卵性双生児の違いと特徴は?
双子には、一卵性双生児と二卵性双生児の2種類があります。
それぞれの妊娠確率や特徴が異なるため、詳しく確認してみましょう。
一卵性双生児
一卵性双生児は、1つの受精卵が何らかの理由で分割し、2つに分かれて成長する現象から生じます。
一卵性双生児の特徴として、以下が挙げられます。
- 遺伝情報:完全に同じ遺伝情報を持つ
- 性別と血液型:同じ性別と血液型を持つ
- 外見:見分けがつかないほど似ている
- 妊娠確率:0.3〜0.4%
不妊治療による妊娠と自然妊娠では、一卵性双生児が誕生する確率に大きな違いはありません。
二卵性双生児
二卵性双生児は、異なる2つの卵子がそれぞれ別々の精子によって受精し、成長することから生まれます。
二卵性双生児の特徴として、以下が挙げられます。
- 遺伝情報: 各双生児は異なる遺伝情報を持っている
- 性別と血液型:性別や血液型が異なることもあれば、同じ場合もある
- 外見:兄弟姉妹と同じくらいの類似性しかない
- 妊娠確率:0.6~1%
二卵性双生児は、見た目や遺伝情報が全く同じというわけではないため、兄弟が同時に生まれたと考えるとわかりやすいです。
出産時のリスクが異なる双子の膜性の違い
膜性とは、絨毛膜(胎盤を形成する膜)と羊膜(胎児が育つ環境を形成する膜)の構成を指します。
絨毛膜の数が胎盤の個数を、羊膜の数が胎児が成長する「部屋」の数を定義します。
これらの違いにより、双子の妊娠におけるリスクや管理の必要性が異なるため、以下の3つの膜性の違いを理解しておくことが大切です。

それぞれの特徴やリスクを詳しく確認してみましょう。
一絨毛膜一羊膜双胎
一絨毛膜一羊膜双胎は、双子が1つの胎盤と1つの羊膜を共有する珍しいケースです。
このタイプは一卵性双生児の中で1%未満の発生率を持ち、特に注意が必要です。
2人の胎児が同じ部屋内で成長するため、へその緒が絡むなど、出産時のリスクが他の双胎よりも高くなることがあります。
定期的に病院に通い、胎児の状態を確認するようにしましょう。
一絨毛膜二羊膜双胎
一絨毛膜二羊膜双胎では、双子が共有する胎盤は1つでありながら、それぞれ独自の羊膜があります。
このタイプは一卵性双生児の中で最も一般的で、全体の約75%を占めています。
それぞれの胎児が別々の羊膜内で成長するため「別の部屋」にいるともいえますが、共有された胎盤を通じて血流が互いに影響し合うため、医療的な注意が必要です。
二絨毛膜二羊膜双胎
二絨毛膜二羊膜双胎は、双子がそれぞれ独自の胎盤と羊膜を持つタイプです。
この構成は、二卵性双生児のほとんどが該当しますが、一卵性双生児の約25%も二絨毛膜二羊膜双胎に属します。
それぞれの胎児が完全に独立した血流と成長環境を有しているため、双胎妊娠の中でも比較的リスクが低いとされます。
不妊治療で望まれる双子妊娠の5つのリスク
一度に2人の子どもを授かる双子妊娠は、特に高齢出産を希望する方にとって嬉しい状況ですが、さまざまなリスクが存在します。
双子妊娠による主なリスクとして、以下の5つを紹介します。
- バニシングツイン
- 早産
- 妊娠高血圧症候群
- 胎児発育不全
- 仰臥位低血圧症候群
双子妊娠によるリスクもあらかじめ理解しておきましょう。
バニシングツイン
バニシングツインは、双子の一方が妊娠初期に胎内で成長が止まり、存在自体が母体に吸収される現象を指します。
この現象は、初期の超音波検査で胎嚢が2つ確認されたにもかかわらず、後の検査で一方の胎嚢がみられなくなる場合に起こります。
亡くなった胎児は母体に吸収されるため、残る赤ちゃんには通常影響がなく、追加的な治療が必要ない場合が多いです。
早産
早産は妊娠22週から37週未満での出産を指し、この時期の赤ちゃんの生存可能な最低限の成熟度に達していると考えられます。
早産児は、未熟児や低出生体重児とも称されます。
人口動態調査のデータによると、単胎妊娠の早産率は4.7%であるのに対し、双子やその他多胎妊娠では50.3%です。
このことから、多胎妊娠の半数が早産であることが示されています。
早期に生まれた赤ちゃんは、身体的発育が未完成であるため、可能な限り妊娠を長期間維持することが望まれます。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は、妊娠を機に通常の血圧から高血圧へと変化する病態を指します。
特に双子妊娠では、循環血液量の増加がみられるため、妊娠高血圧症候群のリスクが高まります。
初期には自覚症状がないことが多いですが、血圧の持続的な上昇は頭痛や耳鳴りを引き起こすため注意が必要です。
さらに重症化するとけいれんや肝臓、腎臓の機能障害の原因になります。
胎児発育不全
胎児発育不全は、予定された出産週数に比べて胎児の成長が遅れている状況を指します。
双子妊娠では、2人の胎児に均等に栄養が分配されるとは限らず、胎児発育不全の問題が顕著になりがちです。
一卵性双胎の場合、共有される胎盤からの栄養供給に偏りが出やすく、その結果、発育不全のリスクが高まります。
仰臥位低血圧症候群
仰臥位低血圧症候群は、妊娠後期に特にみられる症状で、成長した胎児の重みが下大動脈を圧迫し、血圧の低下を引き起こします。
この状態は単胎妊娠でもよく発生しますが、双子やそれ以上の多胎妊娠での発生率はさらに高いです。
対策としては、横になる際に左側を下にして寝ることで、症状の予防が期待できます。
不妊治療による双子出産で利用できる3つの社会制度
最後に双子を出産する際に活用できる、おすすめの社会制度として、以下の3つを紹介します。
- 産前産後休業
- 出産育児一時金
- 高度療養費制度
子どもが突然2人もできることは、喜ばしいことですが、経済的な負担も2倍になります。
少しでも負担を減らすためにも、社会制度を活用しましょう。
産前産後休業
産前産後休業は、労働基準法に基づき保障された働く母親の権利で、産休とも呼ばれます。
通常の出産予定日6週間前からの取得が可能ですが、双子の場合には14週間前から産休を取ることが認められています。
なぜなら、双子妊娠が早産のリスクを高めるからです。
産前産後休業を活用して早期に業務を引き継ぎ、双子出産に備えましょう。
出産育児一時金
出産育児一時金として子ども1人当たり42万円が支給され、双子ならば合計で84万円が補助されます。
出産育児一時金を病院に直接支払うことができる直接支払い制度を活用すると、出産費用の管理が容易になります。
この制度を利用することで、経済的な負担や支払いのストレスを軽減しながらスムーズに出産準備を進めましょう。
高度療養費制度
双子妊娠は、病気や切迫早産などでの入院が必要になることもあります。
このような状況で支援となるのが高度療養費制度です。
高度療養費制度は、1ヶ月の医療費が自己負担額を超えた場合、その超過分が補助される仕組みになっています。
利用可能な補助額は所得によって異なるため、事前に自分の条件でどの程度の支援が受けられるかを把握しておきましょう。
不妊治療に関するよくある質問
- 不妊治療で双子が増えるのはなぜ?
- 不妊治療で双子の確率はどのくらい?
- 双子の妊娠で1人が亡くなる原因は何?
- 双子はいつ出産するのがベスト?
- 双子は流産しやすい?
- 双子の場合のお腹の出方は?
- 双子の胎児は体内でどうなってる?
不妊治療で双子が増えるのはなぜ?
不妊治療中に双子が増える主な理由は、治療で使用される排卵誘発剤にあります。
この薬剤は、複数の卵子の排卵を刺激することで、自然に比べて多胎妊娠の確率を高めます。
その結果、治療を受ける女性が双子やそれ以上の多胎を妊娠する可能性が増加するのです。
不妊治療で双子の確率はどのくらい?
不妊治療による双子の妊娠確率は、治療方法にもよりますが、特に二卵性双生児の場合の確率は約1%とされています。
二卵性双生児は、異なる二つの卵子がそれぞれ異なる精子によって受精し、成長することで生まれます。
不妊治療の技術が進むにつれて、二卵性双生児の妊娠が自然妊娠と比べて多いです。
双子の妊娠で1人が亡くなる原因は何?
バニシングツインという現象では、妊娠した双子の一方が初期に死亡し、その後母体に吸収されることがあります。
この現象の具体的なメカニズムは未だ完全には解明されていませんが、多くの場合、胎児の染色体異常が原因とされています。
双子はいつ出産するのがベスト?
双子の理想的な出産時期は、妊娠36〜37週とされています。
単胎妊娠では出産が39〜40週に行われるのが最も安全と考えられていますが、双子の場合は状況が異なります。
双子妊娠の場合は、妊娠が進むにつれて胎内でのリスクが高いです。
突然の胎児死が発生する可能性が増加するため、早めの出産が推奨されます。
双子は流産しやすい?
双子の妊娠では、単胎妊娠に比べて流産率や子宮内胎児死亡率が高くなる傾向があります。
人口動態調査によると、双子出産で少なくとも一方が亡くなる割合は5.97%で、これは全体の死産率1.97%を大きく上回っています。
双子の場合のお腹の出方は?
双子を妊娠すると、お腹の大きさは単胎妊娠時よりも大きくなります。
単胎妊娠では妊娠中期にもお腹の膨らみが目立たないことがありますが、双子の場合は妊娠中期にすでにかなりの大きさになっていることが一般的です。
妊娠5ヶ月ですでに他の人からも妊娠していると認識されるほどです。
また、双子妊娠の8ヶ月では、通常の妊娠の臨月と同様のお腹の大きさになることが多く、日常生活の中でその大きさに苦労する場面も出てくるでしょう。
双子の胎児は体内でどうなってる?
双子の胎児は、通常の赤ちゃんと同じように成長する過程で頭位(頭が下向き)になることが一般的です。
しかし、双子の場合は胎児の配置が複雑になりやすく、一方が逆子(頭が上向き)であったり、横向きに位置していることもあります。
これは、双子がお互いのスペースを共有しているため、個々の胎児の位置取りが複雑になるためです。
不妊治療による双子妊娠の確率やリスクを理解しておこう!
双子の妊娠には多くの喜びが伴いますが、同時にさまざまなリスクも存在します。
そのため、定期的な妊婦健診が重要です。
また、双子を育てることには経済的・身体的・精神的な負担が伴うことを理解し、家族や周囲のサポートを積極的に求めることが大切です。
現在では、双子の出産や育児を支援するためのさまざまな社会制度があります。
利用可能なサポートを確認し、必要に応じて活用しましょう。