
不妊治療にはどのようなステップがあるの?

どのステップから不妊治療を始めたら良いのかわからない!
不妊治療のステップにかんして、このような悩みをお持ちではありませんか?
タイミング法や人工授精、体外受精など、不妊治療の用語は耳にするものの、具体的にどのような治療なのか疑問を持っている方は少なくありません。
不妊治療はステップごとに身体的・費用的負担が異なります。
この記事では、不妊治療の各ステップの治療法やステップアップ・ステップダウンの判断基準、不妊治療でかかる費用について解説します。
不妊治療を始めたいけど、どのような治療が行われるのかわからなくて不安という方は、ぜひ参考にしてください。
- 不妊治療の各ステップの治療法
- 最初のステップの決定方法
- ステップアップ・ステップダウンの判断基準
- 不妊治療でかかる費用
- 不妊治療の費用負担を減らす方法
この記事の監修者
不妊治療のステップ
不妊治療は以下の6つのステップがあります。
- タイミング療法
- 排卵誘発法
- 内視鏡手術
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
それぞれのステップでどのような治療を行うのかを確認してみましょう。
タイミング療法

タイミング療法は、排卵日に合わせて性交を行う初期段階の不妊治療です。
このステップでは、医師が超音波検査を用いて卵巣の卵胞を観察し、その成熟度合いを基に排卵日を予測します。
排卵促進のホルモン(LH)の濃度も検査され、より精確なタイミングでの性交を促すことが可能です。
特に、排卵予定日の2日前から当日にかけての性交が、妊娠の確率を高めるとされています。
タイミング療法は基礎体温の記録をつけることにより、自宅でも試みることが可能です。
医師の指導のもと、確実な排卵が行われているかを確認しながら進めたい場合は、医療機関に訪れましょう。
排卵誘発法
排卵誘発法は排卵がない、または不規則な場合に用いられる治療法です。
このステップでは、排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、健康な排卵を促進します。
主にタイミング療法や人工授精、体外受精などの他の不妊治療を助けるために行われることが多いです。
排卵誘発法によって、妊娠を望むカップルが成功率を高めることが期待できます。
治療は医師の監視のもとで進められ、患者の健康状態や薬剤の反応に応じて調整されます。
内視鏡手術
内視鏡手術は、不妊治療において重要な検査および治療手段です。
この手術を通じて、子宮内膜症や卵管の問題など、妊娠を妨げる可能性のある状態を診断し、治療することが可能です。
具体的には、子宮鏡を使用して子宮内のポリープや筋腫を除去し、卵管鏡によって卵管の閉塞を解消します。
これにより、自然妊娠の確率を向上させることができるのです。
この方法は、診断と治療が一度に行えるため、効率的であると同時に患者さんの負担も軽減されます。
人工授精
人工授精は、精子の質に問題があるケースに効果的な治療法です。
このステップでは、運動性の高い精子を選択的に回収し、子宮内に直接注入することで妊娠の可能性を高めます。
特に、性交渉による自然な妊娠が難しい場合や、精子の数が不十分な状況に対応するために用いられます。
人工授精は、女性の体に負担が少なく、自然な妊娠に近い妊娠が可能です。
治療は通常、排卵を見計らって行われ、数回の試みが推奨されます。
人工授精が成功しない場合には体外受精へとステップアップすることが一般的です。
体外受精
体外受精は、受精の障害がある場合に適用される高度な不妊治療です。
このステップでは、卵子を女性の体外で受精させ、その後、子宮内に受精卵を戻す手順を取ります。
主に以下の場合で用いられます。
- 卵管が機能していない、あるいは手術で切除後である
- 精子の数が少ない
- 人工授精による妊娠が難しい
治療には、卵巣を刺激して複数の卵子を同時に得る方法や、自然サイクルを利用した採卵がありますが、より多くの卵子を確保するために調節卵巣刺激法が採用されます。
受精した卵子は、新鮮または凍結保存された状態で子宮に移植され、その後の妊娠に至るまでの過程が医師によって管理されます。
顕微授精
顕微授精は、特に受精に困難を抱えるカップル向けの治療法です。
このステップでは、体外受精と同じように卵子と精子を採取した後、体外で精子を直接卵子に注入します。
これにより、男性の不妊や特定できない原因による受精の問題を克服することが可能になります。
顕微鏡下で精子を選択し、卵子への注入を行うため、受精率を向上させることができるのです。
この方法は、他の治療法で成果が得られなかった場合に選択されることが多く、精子の活動が限定的な状況にも対応できます。
不妊治療のステップアップの判断基準
不妊治療におけるステップアップの判断基準は、主に年齢や治療期間を目安にします。
通常、1つの治療法を半年間試しても妊娠に至らない場合は、次の治療ステップへ進むことが推奨されます。
特に以下にあてはまる場合は、迅速なステップアップが必要となることが多いです。
- 35歳以上の方
- 不妊期間が長いカップル
- 特定の健康状態や精子の質による不妊
また、個々の状況によっては、高度な治療を選択することが望ましい場合もあります。
不妊治療のステップの選択と進行は、医師に相談しながら検討しましょう。
不妊治療の最初のステップの決定方法
不妊治療の最初のステップを決定するために、初診時に年齢や不妊期間、既往症の有無などの詳細な検査が行われます。
年齢が若く、不妊期間が比較的短い場合は、タイミング法で治療を開始することが一般的です。
軽度の男性不妊が原因や性交渉に問題があるケースでは、人工授精が適している場合もあります。
高齢者や重度の男性不妊が確認された場合、または特定の既往症を持つカップルは、初めから体外受精や顕微授精を考慮することも可能です。
治療法の選択には医師との相談が不可欠であり、カップルの希望も重要な判断基準となります。
不妊治療はステップダウンもできる!
不妊治療を進める中で、体外受精の終了が必ずしも妊娠の諦めを意味するわけではありません。
多くの場合、カップルは治療のステップダウンを選択し、タイミング法や人工授精など、他の治療法に戻ることも可能です。
また、クリニックを離れて自己管理下での妊活を続ける選択もあります。
大切なのは体外受精後の選択肢を理解し、自分たちに合った治療方法を選ぶことです。
ステップダウンの判断基準
不妊治療のステップダウンは、個々の状況により異なりますが、次のようなタイミングで検討しましょう。
- 体外受精の続行が困難と感じたとき
- 経済的な限界に達した場合
- 仕事と治療のバランスが取れなくなったとき
- 治療疲れを感じ、一時的な休息を必要としているとき
これらの状況下では治療法を再検討し、より負担の少ない方法にステップダウンすることも選択肢の1つです。
たとえば、体外受精から人工授精や、高度な治療からタイミング法へのステップダウンも考えられます。
治療のステップダウンは、不妊治療の終了を意味するわけではなく、状況に応じた適切な調整と考えましょう。
ステップダウンできない場合
不妊治療では、以下のようなステップダウンできない場合も存在します。
- 卵管に重度の問題がある場合
- 精子に重度の問題がある場合
これらの状況では、体外受精以外の選択肢が限られるか、まったく選択できないことがあります。
以下のような場合だと、人工授精やタイミング治療は選択肢として効果的ではなくなります。
- 卵管が詰まっている
- 切除されている
- 重度に損傷を受けている
また、無精子症や極端に精子の数が少ない場合は、顕微授精のみが適切な治療法となり、ステップダウンは選択できません。
ただし、精子の状態が完全に治療不可能ではない限り、人工授精が可能な場合もあります。
ステップごとの妊娠確率を医師と相談しながら、ステップダウンを検討しましょう。
不妊治療がステップアップするごとに負担が増える
不妊治療を進めるにつれて、身体的・費用的負担も大きくなります。
特に体外受精などの高度な治療では、女性は肉体的、精神的なストレスが増加し、経済的な負担も重くなる傾向があります。
不妊の原因が男性にある場合でも、治療の主な負担は女性が担うことが多く、頻繁な通院は仕事や社会生活に影響を及ぼす可能性が高いです。
なぜなら、体外受精では採卵と胚移植のために複数回のクリニック訪問が必要で、それぞれのステップでの痛みや薬の副作用も女性には大きな負担となることがあるからです。
身体の状態や金銭状況を確認しながら、治療の進め方を検討しましょう。
【ステップ別】不妊治療の料金
内閣府「選択する未来2.0」第3回会議資料では、不妊治療で必要な費用として以下を挙げています。
治療内容 | 保険適用 | 費用範囲(1回あたり) |
---|---|---|
一般不妊治療 | 適用 | 数千円〜2万円程度 |
タイミング法 | 適用 | 数千円〜2万円程度 |
排卵誘発治療 | 適用 | 数千円〜2万円程度 |
人工授精 | 適用 | 1〜3万円程度 |
体外受精 | 適用 | 20〜60万円程度 |
顕微授精 | 適用 | 30〜70万円程度 |
着床前診断PGT | 適用外 | 10〜20万円程度 |
精液凍結保存費用 | 適用外 | 2〜4万円程度 |
不妊治療はステップアップするごとに経済的な負担も大きくなる傾向があります。
さらに、治療が進むにつれて通院回数が増え、それに伴う交通費も負担が大きくなる可能性があるため注意が必要です。
また、標準治療以外にも、以下のような自己負担で行う補助的な治療もあり、追加費用も考慮する必要があります。
- 漢方
- サプリメント
- 鍼治療
- ヨガ
不妊治療における費用は、さまざまな出費が見込まれることを念頭に置いて計画を立てましょう。
保険適用を活用して負担を減らそう!

2022年4月の制度改訂により、不妊治療にかかる医療費の多くが保険適用内に含まれるようになり、窓口での支払いは原則として自己負担の3割となりました。
これには、以前は助成制度に頼っていた体外受精などの高度不妊治療も含まれます。
ただし、治療を受ける女性の年齢には制限があり、43歳未満である必要があります。
また、40歳未満の女性は最大6回、40歳から43歳未満は最大3回の治療が保険適用となります。
年齢が高くなるほど成功率が低下するため、不妊治療は早期に専門のクリニックでの相談を始めましょう。
不妊治療のステップに関するよくある質問
タイミング法からステップアップする目安は?
タイミング法を適用した不妊治療において、一定期間妊娠に至らない場合は、ステップアップの検討が必要です。
通常、タイミング法を6ヶ月〜1年実施しても妊娠が確認できない場合には、人工授精へのステップアップが推奨されます。
ステップアップのタイミングは、年齢や治療経過を考慮して決定しましょう。
人工授精からステップアップする目安は?
人工授精を経ても妊娠に至らない場合は、ステップアップの検討が必要です。
多くの場合、人工授精は2~4回の試みで妊娠に成功することが多いです。
しかし、5~6回の試行にもかかわらず妊娠に至らないときは、年齢や不妊の原因を考慮した上で、体外受精などのステップアップを検討しましょう。
不妊治療で最初に行うことは?
不妊治療で最初に行うことは、不妊の原因を探る検査です。
医師は不妊の原因を特定するために必要な検査を行い、その結果に基づいて治療方針を決定します。
見つかった原因に応じて、薬物療法や手術が選択されることもあります。
もし不妊の具体的な原因が明らかでない場合は、妊娠の可能性を高めるためにタイミング療法や人工授精、体外受精と順番にステップアップしましょう。
不妊治療の初回は夫婦そろって行くの?
不妊治療を開始する際、最初の診察には夫婦で臨むことが推奨されています。
なぜなら、初診において男性の検査も行うことで、迅速に治療に入ることが可能になるからです。
婚姻状況に特別な事情がある場合は、必要な書類を準備する必要があります。
不妊治療は2人で同じ理解と目標を持つことが重要です。
また、治療の過程では夫婦の間で心境の変化が生じることもあります。
そうした時こそ、互いの気持ちや想いを共有し、一緒に話し合うことが大切になります。
特定不妊治療費助成制度は利用できないの?
2022年3月までの体外受精や顕微授精には、国の助成として特定不妊治療費助成制度が利用可能でした。
しかし、保険制度の変更に伴い特定不妊治療費助成制度は終了しました。
不妊治療の保険適用は、一般的な体外受精や顕微授精の負担を軽減するものですが、全ての治療が保険の対象になるわけではありません。
保険適用条件以上の不妊治療や着床障害、不育症の治療などは保険適用外であり、特に希望者が増えているPGTのような着床前診断は全額自費負担となります。
ただし、2022年3月以前に治療を始めた方で、助成制度の利用回数に余裕がある場合は、経過措置として助成を1回限り受けることができます。
不妊治療のステップアップの判断は医師と相談しよう!
不妊治療の各ステップの治療内容とそれに伴う費用について紹介しました。
自然な妊娠を希望する方は多いですが、実際には妊娠に至るまでには時間が重要です。
子どもを望む夢を現実に変えるためには、カップルにとって最適なタイミングでの適切なステップを実施することが重要となります。
子どもを授かるという夢を実現するためには、積極的に医療機関を訪れ、医師と相談しながら状況に応じた治療計画を立てましょう。